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 今年もこの季節がやってきた。2月1日からプロ野球の春季キャンプが始まった。中日の番記者となって早5年目。下手したら家族よりも同じ時間を過ごすチーム同様、キャンプインに特別な思いがある。昨オフには阿部寿樹選手や京田陽太選手、三ツ俣大樹選手ら移籍組を含め、退団(引退)で17人もの選手が中日のユニフォームを脱いだ。新時代へ加速する2023年キャンプでは、将来のスター候補たちが続々と出てきてくれることを願っている。

 この時期を待っていたのは選手や報道陣だけではない。ファンも「withコロナ」の下、沖縄で選手の成長を見る機会が拡大する。ようやくコロナ禍前のにぎわいが、球場周辺に戻ってくる。そんな1か月間の春季キャンプの注目点を、ドラゴンズ担当歴5年の私(最近インスタ始めました)が、独自の視点でお伝えしたい。

村松開人、田中幹也、福永裕基の「二塁争い」

 まず1軍の北谷で注目は二塁争いだ。新人の内野手、村松開人選手、田中幹也選手、福永裕基選手が1軍スタートとなった。立浪和義監督も新人の開幕スタメンを示唆しており、その可能性は十分ある。

 この3選手は全て特徴が違う。村松は、静岡高から六大学の名門・明治大で主将も務めた。卓越したグラブさばきや走塁も評価が高いが、なにより広角に打てる力強い打撃が魅力。表情からにじみ出る“野球小僧”感も活躍を予感させる。

 田中は、東海大菅生高時代に甲子園ベスト4、亜大で主将を務めたとは思えないひょうひょうとした雰囲気を持つ。是非見て欲しいのは内野ノック。特に、捕球してから握りかえの速さが尋常じゃない。駒大時代に対戦した鵜飼航丞選手が「ライトヒットだと思って『ラッキー』と走ってたら、幹也にあり得ない位置で取られてヒット1本損した!」と愚痴るほどの守備範囲の広さが武器。“忍者”の異名を誇る俊足にも注目だ。

 福永は、総合力の高さで勝負する。天理高では、巨人・岡本和真選手擁する智弁学園高に敗れて甲子園出場を逃しているので、「プロでリベンジしたい」と鼻息を荒くする。ナゴヤ球場では、室内の打撃練習だったが遊撃の頭上を鋭く越える打球を何度も見た。21年に最多安打を獲得した阪神・近本光司選手と同じ、高品質のこだわりバット「ヤナセ」が火を噴くか注目だ。

投手陣は石川翔、鈴木博志に注目

 ブルペンも注視したい。まずは、プロ6年目・石川翔投手だ。度重なるけがもあり育成契約となっているが、昨秋のキャンプに続き北谷メンバーに育成から唯一抜てきされた。力強い真っすぐが最大の魅力で、負けん気の強さもある。同期入団の清水達也投手、山本拓実投手がチームの主力となりつつある中、起死回生のチャンスが訪れた。この北谷のブルペンでアピールすることだろう。

 もう一人は、同じ17年ドラフトで1位だった鈴木博志投手。オフ期間、先発陣について質問を受けた立浪監督が何度も名前を挙げていた。昨季は3試合のみの登板だったが、うち2試合で鮮烈な印象を残した。また、注目するのはグラウンドだけじゃない。ファンフェスで松山千春のモノマネを披露して爆笑を誘ったかと思いきや、インスタグラムでは根尾昂や福島章太ら後輩のイラストデザインするなど、アーティスティックな一面も披露。休日はゴルフへ行くのか? それともリフレッシュに芸術活動するのか? はたまた、休日返上で練習をするのか。「ヒロシの休日」が更新されるのも楽しみだ。

 せっかくなら、北谷グルメも楽しんでほしい。DeNAへ移籍した京田選手とよく足を運んだのが、アメリカンビレッジのデポアイランドにある「タコライスCafeきじむなぁ」。卵ふわふわのオムタコが最高。これが結構なボリュームで、食べ応えは十分だ。さらにすぐそばにある「ブルーシール」のアイスクリームでお腹を落ち着かせれば、これだけで沖縄へ来た価値があると実感できるだろう(言い過ぎ?)。沖縄でキャンプを過ごすプロ野球選手がこぞってSNSにあげる「ゴーディーズ」のハンバーガー(特にチーズバーガー)も激ウマだし、「ステーキハウス四季」でオリオンビールを片手にステーキを食べるのも……。同じステーキなら、少し球場からは離れるが「ステーキハウス金松」もおすすめ。レトロな雰囲気も気分を高揚させ、どんどんお肉食べちゃいます。

ドラ1・仲地礼亜と同学年の根尾昂…2軍のキャンプ地・読谷も過熱

 今年は2軍のキャンプ地・読谷も、例年以上にファンの熱視線が向けられそうだ。何と言っても、沖縄の大学から初めてのドラフト指名を受けた仲地礼亜投手がいる。立浪監督は仲地を即戦力評価しながらも、新人が陥りやすいオーバーペースを危惧。「投手の場合は焦ると(良くないから)ね。読谷と北谷は近いし、いつでも来れる。慣れ親しんだ読谷でスタートするのもいい。当然、地元の人も盛り上がっているし、2軍も活気づく」と、じっくり育成することを明かした。

 同学年で先発挑戦する根尾昂投手も読谷からスタート。仲地は以前、根尾について「僕らの世代では第一線を走ってきた選手なので、ライバルではあるんですけどプロでは先輩なので、色々聞いて切磋琢磨できたらいいかな」と話していた。“NNコンビ”が、今年の読谷の看板になりそうな気配だ。

 読谷グルメ情報もお届け。読谷出身の仲地が大学時代にバイトしていたメキシコ料理店「OBBLIGATO(オブリガード)」で、イケメン右腕もほれ込んだパリパリのタコスを食せば、キャンプ見物の充実感も倍増するはず。沖縄感をさらに強めたい場合は、58号線沿いの道の駅「喜名番所」の近くにある「金月そば(きんちちそば)」がおすすめ。沖縄産の小麦を使ったモチモチの麺に、あっさりだけど最後まで飲み干したくなる絶品スープ。記者も読谷取材のランチタイムにはさーっと球場を抜け出し、癒やしの時間を過ごします。最後は、島ジェラートカフェISOLA」さんで〆。どの味を食べても外れはないですが、僕はスタンダードな「ぬちまーすミルク」が大好きです。

近藤廉と郡司裕也の覚醒に期待

 おっと、脱線しました。読谷で注目の選手は、投打で厳選の1人ずつ。まず投手は、プロ3年目の近藤廉投手。昨年の春季キャンプでは1軍抜てきも、左肩痛もありシーズンで活躍することはできなかった。故障も癒えた1月の自主トレでは、こちらが心配するくらいの好気配。特に、真っすぐの威力は以前よりも増した様子で「良かったですか? そう見えてるならうれしいです。自分でもすごく状態はいいので。今年ダメならもう終わりという危機感を持っています。見ててくださいね」と明かしてくれた。独特のリリースポイントと、必殺の真っスラが安定すれば熾烈な左の中継ぎ争いにも十分に加わっていける。

 野手では、郡司裕也選手の覚醒に期待する。捕手登録ながら、外野や一塁がメインとなった昨季。「全てが中途半端だった」と振り返る。昨秋から打撃フォームもマイナーチェンジを繰り返し、胸の前で構えるようにした。自主トレ期間中の打撃練習では、快音を連発。読谷スタートからはい上がって、開幕1軍、プロ初アーチレギュラー奪取に挑む1年にしてほしい。ちなみに、沖縄入りする日の服装は某ハイブランドのコーディネートで決めた。ネクタイ加藤翔平から、ネクタイピンは岡林勇希から、ベルトは京田陽太から誕生日プレゼントされたもの。チーム屈指の愛されボーイが、がむしゃらバットを振る。

 長くて短い1か月。沖縄の太陽に照らされながら、多くの瞬間を目に焼き付けたい。

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(長尾 隆広)

中日沖縄キャンプ 打撃練習をする村松開人


(出典 news.nicovideo.jp)

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